この窓の内側の光景にタイトルをつけるなら、
きっと涼宮ハルヒの名前がつくだろう。
ではこの窓の外側の光景にタイトルをつけるなら。
想像がつかない。
そんな事をふと思っていると。
「どうした長門、外に何かあるのか?」
彼が、本ではなく窓の外を見ている私を不思議に思ったのだろう、
声をかけてきた。
「何も。」
「そうか?ずいぶん熱心に見てたから何かあるのかと思ったけどな。」
「そう。」
ああ、やはり。
いつもと違う自分を不審に思ったのだろう。
「あなたが気にする必要のあるものはない。」
彼の精神に無意味な波をたててはいけない。
微小なバグのようなものでも、放置するのはよくないだろう。
「そっか。
けどそうやって外を見るのもたまにはいいんじゃないか?」
「…そう。」
何気なく帰ってきた言葉は、
私の意識を否定したが私を肯定した。
それが原因と思われる。
私は思っていたことを口にした。
「窓の外側に流れる時間に主題をつけたらと考えていた。」
そう言うと、彼は少し驚いた顔をした後に、
私を包み込むように笑った。
「…へえ。いいんじゃないか?」
「でも、思い浮かばない。」
「なんで?」
「分からない。つけ方をしらない。」
「うーん…まあそう難しく考える必要もないだろ。」
言いながら、彼は私のそばに、
窓に近づいて。
窓を見ながら言った。
「『長門有希の見た時間』とかでいいんじゃないか?」
その言葉に驚いたのは、私。
「私の名前。」
「ああ、だってこのアングルでこの窓からこの時間に外を見るの、お前だけだろ?」
「それは事実と異なる。過去にもこの場所から外を見る人間は存在した。」
「ああ、そういうことじゃなくてな。」
「今この時間外を見てるのはお前だけだってこと。」
「……。」
「ん?どうした。」
「それも、違う。」
「そうか?」
「今はあなたが一緒に見てる。」
「…ははっ、そうだな。」
このとき何を感じたかは、言葉にはできない。
それでも。
記憶からは消えない光景が
私の中に残った。
END
ほのぼの有希ちゃん。
でもSOS団の部室から見えるのって中庭だけだったような…。;;
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